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ある夜の風景

夕方の打ち合わせの気持ちには大きく分け、二つに別れてきます。

片道、車で20分程度の距離でしたら車の中からの風景はそう変化は無いのですが、先日の打ち合わせの様に1時間程度まで行くと風景も大きく変わり、車の中からいろいろ見えて来る小さな事にも興味が尽きません。 

昨日の打ち合わせに向かう道はやや遠回りになるのですが、少しばかり時間に余裕があったので何時もとは違う道を走って行きました。

行き交う車もほとんど無い雪道を走つていて、1軒の質素な造りの農家の窓から明かりが漏れていていました。煙突からは白く煙が立ちこめています。

車でただ通り過ぎてしまうだけなのですが、私は何時の時もこの家で暮らしている家族のことを空想してしまいます。とにかく興味が尽きないのです。

ただでさえ運転が嫌いな私振り向いてばかりいるので、何時か沢へ落ちてしまう様な気がする事があります。

以前、思ってもいなかった道で出会った、小じんまりとしたトンネルを通つた記憶が残つていました。この小さなトンネルは夢の中にも出てきたことがあり、なかなか思い出深い夢の1つとして記憶に残っています。

私にとって「夢」も時には仕事に結びつく事があるようなのです。

3年程前の事なのですが、郊外のかなり広く起伏の大きな土地についての相談がありました。あのように不思議に思える空間に出会った事は有りませんでした。

広さは3000坪程あつたでしょうか。

国道からは、至って近くの立地なのですが、高さが5メートル程の小高い「小振りな丘」に囲まれ、周りからはこの場所がある事に気が付かないのです。

依頼の内容としては、ここに8戸の家を企画して分譲して行きたいとの内容でした。私はすぐに「トンネルだ」と決めていました。いきなりここから切り出してしまいますと、この話は難しい方へ進んでしまいますので、まずは地形の模型を粘土で作つて見る事にしました。

「夢」の中に出てきた暗いトンネルをくぐり、別世界へ突然迷い込む・・・。  この仕事は実現しませんでしたが、図面ケースの奥にはこの時に考えたプランが幾つか眠っています。おかしなもので、実現し無かつたプランには愛着が湧くものの様ですね。

今日の画像は打ち合わせに向かう途中、見つけた小さな「駅」です。「駅」の広さは畳1.5帖位でしょうか。壁には空白の中にわずかばかり、到着時刻が書き込まれている時刻表が貼ってあり、ベンチの隅には何冊かのノートが置いてありました。





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